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伝承と伝統の違いとは

伝統,伝承,和傘 地域おこし
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こんにちは、モリ(@ijumori)です。

 

先日、古舘伊知郎氏がいいことを言っていました。

このことが書かれていたツイートを紹介します。

古舘さんの「伝承と伝統は違う」って話、これ堀潤さんが備前焼の人間国宝の方に取材したとき聞いた 「伝承っていうのは昔からある物をちゃんと守るのが伝承|伝統っていうのはその時代の職人が最も新しい事にチャレンジした連続、だから伝統は革新なんだ」 って話かも #ぶっちゃけ寺 #クロス

 

モリ
モリ

今回は、伝承と伝統について深掘りします!

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伝承と伝統は違う

伝承と伝統は似たような言葉ですが少し意味が違います。

伝承は、昔からあるものをそのまま引き継ぎ、守っていくこと

一方、伝統とは、昔から受け継いできたものをその時代にあわせてイノベーションを加え、受け伝えていくこと

このような違いがあります。

 

例えば、歌舞伎は日本の伝統芸能の一つで、江戸時代の頃からあったと言われています。

昔からある演目をそのまま「伝承」してきたとしたら、とっくに歌舞伎は廃れていたのではないでしょうか。

しかし、歌舞伎役者や関係者がアレンジを加え、新しい価値を与え続けてきたことで、今も支持されているのだと思うのです。英語を使った歌舞伎を海外でおこなった役者さんもいましたよね。「伝承」し続けているだけでは、こんなアイデアは生まれなかったと思います。

中途半端に古いものはいずれなくなっていくでしょう。しかし唯一無二の価値があり、昔から残り続けてきたものはこれからの時代において価値を増していきます。

時代に合わせ、常にイノベーションを積み重ねていく。

これが、伝統なのです

なぜこのような話をしているかというと、先日ある地域の方々のお話を聞いてきたときに、違和感を覚えたことを思い出したからです。

伝統を残すことは時代に合わせていくこと

群馬県の地域おこしフェアで、「うちはこんなところですよ、ぜひ来てください」というプレゼンを聞いてきました。出展していた自治体の多くは、「うちには伝統的な○○があります」という話をしていました。

富岡市の方がこんな事を言っていました。

ウチの地域では昔、養蚕が盛んでした。だから養蚕文化は残さないといかん

養蚕農家はみんな高齢なので、いま新規の養蚕農家を増やさなければこの文化がなくなってしまう

と。なるほど。

熊本では工場で大規模に養蚕業をしています。卵を孵化させ、育てて、繭にする。その繭から糸を紡ぐ。この工場では工業的にシルクの生産をしています。この工場1つの生産量は、世界遺産にもなった富岡製糸場のある富岡市全域のシルクの生産量を超える規模なのです。

SILK on VALLEY | 熊本県山鹿市による新シルク蚕業構想
SILK on VALLEYは熊本県山鹿市による新シルク蚕業構想です。九州の近代養蚕発祥の地である山鹿から新しいシルク蚕業が、今始まります。
株式会社あつまる山鹿シルク・株式会社あつまるホールディングス|100%熊本百貨店
山鹿市は、かつて養蚕業で栄えた地。熊本県内には、ピーク時の昭和初期に6万8000軒だった養蚕農家が、現在、山鹿にはわずか2軒のみ。そこに、“ジャパンシルクの復活”を目指して2014年に設立されたのが、農業生産法人株式会社あつまる山鹿シルク。...

 

富岡市の養蚕業は、昔ながらの生産方法でシルクをつくっています。蚕が食べる桑の葉を1日2回収穫して与えます。朝5時に収穫して蚕に与えて、夕方にも収穫してまた与える。繁忙期はこの繰り返しなのだそうです。

一方で熊本の工場では、蚕が食べるのはペレット状になった配合飼料です。それも時間になったら自動で餌が与えられます。労働力と効率化の点から考えると工場のほうが優れていると言えるでしょう。

富岡市の人に熊本の工場の取り組みを伝えたところ

工場で作られたシルクなんて嫌じゃないですか

とおっしゃっていました。

さらには

富岡でシルクをつくることに意味があるんだ

と。

これは富岡製糸場が世界遺産に登録されたので、なおさらそんな思いが強いのかもしれません。

富岡市では養蚕文化を残すために努力しています。

伝統文化を残すことは大切なことです。

しかしその方法は、時代が移り変わるうちにカスタマイズされていく必要があると強く感じました。

伝統にはイノベーションが必要

富岡市では富岡で生産されたシルクを「富岡シルク」としてブランド化し、売り出しています。東京の多摩地区には7軒の養蚕農家が残っていて、「東京シルク」という名前で生産しています。

養蚕文化がなくなってしまうんじゃないかという危機感を持っているのならば、富岡だの東京だの言っている場合じゃないんじゃないかと思うんです。

富岡と多摩地区、そして熊本にある工場のシルクの違いが鮮明であれば差別化してブランド化できると思いますが、それぞれ高い品質のシルクを生産しているので、そこまで違いが出るのかわかりません。

仮に大きな違いがないのであれば、「JAPANブランド」で日本の質の高いシルクとして売り出していくほうが、国内外問わず反響があるのではないかと思うのです。

富岡市が地域の産業文化として伝承していきたいのであれば、地域おこし協力隊や海外の研修生など、養蚕農家を増やす活動を地道にしていけばいいでしょう。それも必要なことです。そして、地域ごとに競い合って質を高め合うのもいいと思います。

しかし、この養蚕文化を伝統文化としてとらえた時、ここにイノベーションを加える必要が出てきます。その一つが工業化であり、もしくは付加価値を与えた新しいシルクを生み出すことです。

すでに蚕の遺伝子組換えをし、蚕の吐く糸にクモの糸の成分を含ませる研究が行われています。クモの糸の成分が含まれたシルクは従来のものよりも引っ張っても切れにくい性質を持っています。また、蚕に与える桑の葉を収穫期の長いラオスで生産したりと、イノベーションを起こしている人はいます。

代々受け継がれてきたものをそのまま後世に引き継ぐことも大切ですが、付加価値を加えたり新しいことに挑戦することも同じくらい大切なことです。

富岡市の人と話をしていてそんなことを思ったものです。

最後に

文化を維持するのでさえ難しいところですが、伝統として後世に受け継いでいくのであれば、やはりイノベーションを加え続ける必要はあると思います。

それが伝統と伝承の違いなのです。

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。

モリ(@ijumori)でした。

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