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木質バイオマス発電は林業を救う切り札になるのか

地域おこし
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こんにちは、モリ(@ijumori)です。

 

あなたはいま、林業及び木質バイオマス発電がにわかに注目されているのをご存知でしょうか。

また、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の後押しもあり、全国各地でバイオマス発電所の建設が計画されています。

はたして今後の木質バイオマス発電の未来は明るいのか。

そんなところを見ていきたいと思います。

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いま木質バイオマスが注目されている理由

いま全国各地で木質バイオマスが注目されています。

木質バイオマスとは、未利用間伐材等や製材工場等残材や建設発生木材のことです。

ではなぜ木質バイオマスが注目されているのでしょうか。

その一番の理由は、再生可能エネルギー電力固定価格買取制度、すなわちFITがスタートしたことです。

太陽光発電が全国で一気に普及したのと同じ理由です。

木質バイオマスによる発電にもFITが適用されるので、いま、各地で発電所の建設が計画されています。

 

木質バイオマスを利用した発電所が全国に計画されている

何のために導入するかが鍵となる

木質バイオマス発電|株式会社グリーン発電大分より画像引用

FIT制度が始まったことで、全国的にバイオマス発電所の建設計画が進められました。

もともとは東日本大震災を機にエネルギー事情が急変し、再生可能エネルギー導入の期待が高まったことがきっかけでした。

しかし今では、固定買取価格が高めに設定されているおかげで、これまでは見向きもされてこなかった国内の未利用木材を使って発電・売電して儲けることを目論んだ発電所の計画が広まっています。

決して売電して儲けることが悪だと言っているのではありません。

しかし太陽光発電においてはひどい事例がたくさんありました。

設置をすれば、放っておくだけで電気を作ってくれてお金を生み出すといって、雑多な業者が土地の確保に奔走しました。

その弊害として、ある場所では河川の堤防を削りソーラーパネルを設置したことで、大雨の際に堤防が決壊し大災害を引き起こしたことがありました。

シミュレーションがずさんだったため、当初の計画の半分も発電できないところもあると聞きます。

ソーラーパネル販売業者とそれに乗っかった事業者や土地の所有者みずからの、目先の利益に走った愚かな行動が引き起こした結果です。

木質バイオマス発電所でも同じように、お金儲けのためだけにずさんな計画で進められるところもあるかもしれません。

しかしそういう発電所は、ソーラー発電でもあったように、早晩行き詰まることでしょう。

 

では何のために木質バイオマス発電を導入するのがいいのか。

それは、地域に眠っている木材資源の活用と林業従事者の雇用の創出、そして発電所の稼働により生まれる雇用創出を目的とするのがベストな導入理由だと思います。

つまり地域資源を利用し地域に富を生むことこそが木質バイオマス発電を導入する正当な理由となるのです。

 

やってはいけないバイオマス発電

地域資源を利用し地域に富を生み出すと言えば聞こえがいいが、これはどこでもできることではありません。

無理をしないと富が生み出せないのであればそれはやってはいけないバイオマス発電になります。

どういうことか説明します。

木質バイオマス発電では木質燃料と呼ばれる木質チップや製材所から出る端材等が必要になります。

点検日を除けば、24時間稼働し続ける発電所では、木質燃料が途切れることはあってはならないことです。

そのため、木質燃料を十分確保できる見込みが無いのであれば、やってはいけないバイオマス発電になります

木質燃料を確保するために遠い他の地域から持ってくることもやってはいけません。

輸送費がかかり発電コストが高くなるというのがもっともな理由ですが、そもそもの理念が地域の未利用資源を活用するというのがバイオマス発電をする目的なので、遠くから木質燃料を集めなければやっていけないのであれば初めからやらないほうがいいでしょう。

全国でバイオマス発電の建設計画が上がりましたが、その計画がまだ実行に移されていないところが多くあります。

その理由はやはり、木質燃料の確保のめどが立たないことが理由のようです。

先程も述べましたが、遠くから持ってこようとすると輸送コストがかかるので、その分だけ発電コストが高くなります。

そうすると赤字になってしまうのです。

そのため、安価で安定的に木質燃料の確保が喫緊の課題となるわけです。

 

最近の木質バイオマス発電の潮流

木質燃料を安価にそして安定的に確保できないことで計画が頓挫しているバイオマス発電は全国にたくさんあります。

しかし、最近になって、大手企業が湾岸に大規模なバイオマス発電所を建設するケースが増えてきました。

その多くが海外から木質燃料を輸入してそれを利用して発電するという計画です。

海外から輸入するほうが安価に安定的に木質燃料の確保ができるからです。

木質バイオマス発電に限って言えば、木質燃料を海外から輸入して発電したほうがいいのでしょう。

しかし国内の林業界から見れば、国内の林業にとってまったくメリットはありません。

結局、海外の資源を利用し、国内のエネルギーを生み出す構図はこれまでと変わらないのでしょうか。

 

木質バイオマス発電の進むべき道とは

木質バイオマス発電は、木質チップや木っ端を燃焼させて蒸気を発生し、蒸気によってタービンを回して発電する仕組みです。

直接燃焼の他にも、ガス化させてガスでタービンを回す方法もあります。

いずれも、タービンを回して電気を生み出す方法は火力発電や原子力発電と同じ仕組みです。

バイオマス発電のメリットは、蒸気を発生させるために使う木質燃料が国内にたくさんあることです。

特に未利用材と言われている、その名の通り、使われていない木質資源を利用することができます。

これまで見向きもされてこなかった未利用材が高い価値を持っていると言い換えることができるでしょう。

これを使わないなんてもったいないと思いませんか?

 

岡山県真庭市の例

真庭市バイオマス活用推進計画より引用

岡山県真庭市には国内最大級のバイオマス発電所があります。

その発電量は1万kW(10MW)で、一般家庭の約2万2,000世帯分の使用電力に相当します。

バイオマス発電の建設費など総事業費は41億円です。

1年間の売電による売上は21億円。

FITという固定価格買取制度によってこの売上が成り立っています。

この固定価格は20年間維持されるので、諸々の経費を引いても数年で黒字に転換できるでしょう。

 

しかし問題もあります。

1つ目は稼働率の維持ができるかということです。

真庭市のバイオマス発電所が稼働して1年目の稼働率は95%でした。

稼働率が下がればそれだけ売電量は減るわけです。そうすれば直接利益に影響が出てきます。

そのため稼働率を維持することが大切になってきます。

2つ目の問題は、木質燃料の確保が継続できるかということです。

稼働率維持のためには木質燃料の安定確保が鍵となります。

木質燃料の確保は木質バイオマス発電にとって重要な課題なのです。

5,000kW級の発電所では、年間で約6万トンの木質燃料が必要と言われています。

真庭市のバイオマス発電所は1万kW級なので、年間では実に15万トンの木質燃料を必要とします

年に15万トン、これを毎年確保し続ける必要があるのです。はたして可能なのでしょうか。

 

真庭市は、市を中心とした地域から間伐材などの未利用材を年間9万トン、製材所から出る端材など一般木材を5万8,000トンを森林組合や製材所から買い取る計画をしています。

稼働率を維持するために未利用材ではなく、角材や板材として使用ようできるような木材までチップにして利用してしまうのではないか懸念されるところです。

楽観的に考えると、これまで山の手入れが進んでいなかったところの手入れをするようになれば、必然的に山にある未利用材が大量に発生します。

手入れをするエリアを毎年ローテーションしていけば、未利用材の木質燃料を確保できる計画なのでしょう。

また、山に手が入ることで、残す木の質が上がっていくことにもなります。

林業本来の、木を植え→育て→伐って→売る、というサイクルがうまく回るようになるかもしれません。

その循環がうまく行けば素材として高く売れる木材が伐れるし、その木を育成する上で出る間伐材等はチップ等として資源として活用できるようになります。

山の資源が全て活用できるようになるのです。

今はこのような循環がうまくいっていないのです。

木質バイオマス発電はこの好循環を生み出す可能性を秘めているのです。

 

木質バイオマス発電によって好循環が生み出されるとどうなるのか

木質バイオマス発電がうまく回りだすとどういう状態になるのか。

簡単に言ってしまえば、山の整備が進みます。

未利用資源をどう活用できるか考え始めます。

例えば、いま、間伐材は切ったらそのまま山に捨てられています。これは切り捨て間伐(捨て間)と呼ばれています。

間伐材は基本的には素性の良くない木を選んで切るので、売っても値がつきません。そのため、山から運び出すだけで赤字になるということでその場に捨てられてくるのです。

しかしFITのおかげで等級が低い木材でもバイオマス発電に利用されるものであれば、低い等級の値に上乗せされて買い取ってもらえるようになってきました。

そのため、山から低等級の木材も少しずつですが市場に売りに出されるようになってきました。

問題は20年間の固定買取価格制度が終了したあとのことです。

木質燃料を安定的に安価に確保し、発電所を維持することができるのでしょうか。

しかし、20年もあれば適切な山の手入れにより素性のいい木を育成することができているはずです。

いま30年生の木は20年後は50年生になるし、いま50年生の木は70年生になる。

当然20年分、木は成長するので、材積(木の体積)は増えます。

そうなることで木の価値は何倍にもなるのである。

20年間で適正な間伐や育林をおこなうことで、本来の林業としての木を売ってお金にする仕組みがうまく回っていきます。

従来の林業の育林サイクルから生まれる間伐材や製材所から出る端材で木質燃料の確保はできるでしょう。

そして発電の際に出る熱エネルギーをどう活用するかによって、地域に新たな産業が生まれる可能性だってあるのです。

よくあるのが単なる温浴施設。これはあまり良くない。

そうではなくて、熱を利用して何かを栽培育成し、それを加工販売することで外貨を稼ぐ仕組みを作ることが大切になってきます。

例えば、温室栽培で、季節問わず年間作物を栽培したり、それを加工したり。

もしくは魚の養殖をやっているところもあるので、内陸で海水魚の養殖をしてもおもしろい。

アワビやタイの養殖をしているところもあるし、チョウザメを育ててキャビアを特産品にしているところもあります。

ワカサギの養殖をして湖沼へ放流し、ワカサギ釣りのメッカにして遊漁料として外貨を稼ぐことができるかもしれない。

ここで言う外貨とは、地域内で生産されたものを地域外へ売ることによって得られたお金のことを指します。

いづれにしても木質バイオマス発電所を作るということは、電気エネルギーの生産だけではなく、木質燃料を伐る人を増やしたり、発電所で働く人を雇ったり、熱エネルギーで新たな産業を興しそこで働く人を生んだり、新たな特産品をつくって外貨を稼いだりと色んな可能性を秘めているんです。

 

目の前の利益を追わず、長期的な視座で計画を立てていきたい

やろうと思えば周りの山から木を全部切って売れば、すぐにお金が手に入ります。でもそんなことができるのは、木があるときだけ。

木がなくなってしまえば、植林しても売れるようになるまでに50年という長い年月が必要になってきます。

そのため長期的な計画を立て、また複数の業を計画して利益を追求する必要があるでしょう。

一番いいやり方は、木質バイオマス発電団地を作り、発電所の敷地内に製材工場やチップ加工工場、木材市場などが一同に介していること。

移動のコストを抑えられるし、必要なものをすぐに調達できる環境にあるからです。

そうやってギュッと集約できればコストの低減を図れるし、効率も良くなる。真庭市はこれを目指しているのではないかと思っています。

 

最後に

日本の山林面積は国土の7割近く存在します。

しかしほとんど活用されていません。

いろんな課題があって、すぐに林業の復興とはならないと思いますが、今でもできることはあるはずです。

自伐型林業家の育成はそのうちの一つ。

林業家が一人でも増えて、山から木が出てくる状態になればその木をどう使うかの議論が高まるし、すでにある木質バイオマス発電所での需要に応えられるようなります。

卵が先か鶏が先かの議論ですが、林業再生の道は自伐型林業家の育成と木質バイオマス発電所の2つにあると言えるかもしれません。

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。

モリ(@ijumori)でした。

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